ECO TOPICSエコニクスからの情報発信
エコニクスからの情報発信
1994.09.01
ECONEWS vol.015

河・森・魚の微妙な三角関係。

株式会社エコニクス
環境部 陸域環境グループ 藤田 和夫

 前号では河川の中のいろいろな魚類の生息空間についてお伝えしましたので、今回は河川の周辺環境と生息魚類について述べることにします。

 通常、自然河川の海岸には樹木が繁茂しており、河岸林や河畔林と呼ばれています。

 一般にヤマメ(北海道ではヤマベ)サクラマス幼魚、アメマス、ニジマスなどの渓流域に生息する魚類は流下昆虫を料として摂することが知られています。この流下昆虫の中には河岸林より供給される落下昆虫、水面近くを飛翔する昆虫、及び水中に生息する水生昆虫などが含まれます。

 流下昆虫と河岸林の関係について北海道立林業試験場の柳井氏ら(1992)は道南の小河川において林相の異なる4つのタイプの河畔林で流下昆虫量の比較調査を実施しています。それによると流路面に樹木の枝が伸張し、覆いかぶさっている状態になっているヤナギ、ハンノキ林及びミズナラ林では流路面が完全に開放状態であるヤナギ疎林及びトドマツ人工林に比較すると流下昆虫量がかなり多くなるという結果が得られています。このことから、河岸林が自然状態で保たれている河川では常に多くの餌料が河岸林の存在により供給されていることがうかがえます。

 また樹木の枝が水面に伸張している場所は魚類にとっては格好の休息場や避難の場にもなっており、河畔林は魚類にとっては食、住の提供の場として重要な役割を持っています。