株式会社エコニクス
常務取締役 佐々木 達
近年におけるわが国の養殖業の発展はめざましく、平成3年には海面養殖生産量は126万トンに達し、全漁業生産量に占める割合は12.6%、生産額は6,407億円で実に23.7%に達しています。しかしながら、養殖業の大部分を占めている海面養殖、特に海面魚類養殖は過去十数年間に渡る急速な発展により内湾養殖場をほぼ極限まで開発、このため自家汚染による漁場の荒廃を招くに至っています。この漁場汚染防止の永続的かつ抜本的対策に関する技術はいまだに確立されていません。従って、自浄能力以内に収容量を減らす事が基本的解決ですが、これは業者の失業を招き、かつ社会的影響も懸念されています。
一方、北海道周辺海域では内湾などの静穏域が少なく、かつ自然環境は気温、積雪、結氷など魚類養殖にはあまりにも厳しく、また、対象となる高級魚の種苗入手が困難であった事もあり、北海道での魚類養殖はあまり盛んではありません。
また、欧米における魚類養殖をみると、約15年前からフィヨルドの静穏域に恵まれたノルウェーでサケ養殖が始まり、成長産業として急速に発展をとげました。
その後、デンマーク、アイルランド、イギリスなどがこれに追随、続いてフランスやスペインも参加しこれらの競合は生産性、品質管理の水準を著しく高める結果となりました。しかもノルウェーの様なフィヨルドを持たない国では、生産性に対抗する手段として沖合に新しい発想による養殖施設の開発を導き、魚類養殖は今では静穏域での産業ではなくなりました。
この様な状況を背景に、日本においても社団法人マリノフォーラム21(以後MF-21)を中心とした厳しい環境に耐えうる養殖施設の開発が行われ、南西日本ですでに昭和63年から愛媛の南宇和海、熊本の不知火海の両沖合養殖パイロットファームプロジェクトにおいてその効果が実証され、この技術を応用する事によって北海道でも魚類養殖の可能性がみこまれる事、また養殖対象魚種についても種苗生産技術の向上の見通しが立った事から、北海道の海域に適する大規模沖合養殖システムを開発し、魚類養殖業を北海道の沿岸漁業の新時代を担う産業に育成しようという開発目的をもって平成3年度からMF-21を始めとする16企業が参画しこのプロジェクトがスタートしました。
海上ステーション