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1996.11.01
ECONEWS vol.041

食べる勇気より捨てる勇気を!

北海道大学農学部応用生命学科
 助教授(農学博士) 橋床 泰之

 海底の華麗なサンゴ?

実は、ムラサキサンゴタケというキノコ。

 有名な毒キノコのツキヨタケは北海道にないとも云われていますがこれはあまり信用しないほうがいいかもしれません。また、縦に割けるキノコは食べられる、ナメクジの食い痕のあるキノコは食べられる、ナスといっしょに煮れば食べられる、といった食べられる迷信は絶対信じてはいけません。日本にある5,000種ものキノコのうち、食べると確実に命を失うものやその危険性の高いものは10種ほど(ドクツルタケ、コレラタケ、タマゴテングダケ、タマゴダケモドキ、シロタマオニタケ、ニセクロハツ、ニガクリタケ、ドクヤマドリ、ドクササコ、シャグマアミガサタケなど)しか知られていませんが、不幸にも特別に致死率が高いと云われているタマゴテングダケやドクツルタケ、シャグマアミガサタケなどは本州よりもむしろ北海道に多く分布するようです。ただ、うまくしたもので、軽微な毒キノコ(シビレタケなど)の多くは牛糞など汚いものに生えるため、よほど意地汚い輩でない限り口に入れることはまずありません。しかし、これが毒であることを最初に見つけた人は恐らく。。。(絶句)。

 山菜と毒草を誤って食べた場合(多くはアルカロイドという毒)、食後すぐに吐き気が起こりたいがいの胃内容物は吐き出されてしまうので医者は対処療法を施せば済むのですが、毒キノコの場合(殆どがアミノ酸に類似した構造をもつ神経毒)早くて食後30分、ふつう7~20時間後に急激に症状が現われます。2時間以内に、おや?と思ったら、まず胃の内容物を吐く努力を惜しまないこと。

 また、とても胃内部に残っていそうにない場合は、救急車を待つ間にどんなキノコを何だと思って食べたかをメモしておきましょう。キノコの種類によっては緊急性があったり、対処法が限られてくるからです。キノコ中毒を避けるためには、少しでも毒キノコの疑いがあったら惜しげもなく捨てる勇気が必要です。

 ちなみに、やや古くなったマツタケは毒キノコに豹変します。貴方は、このマツタケを捨てる勇気がありますか?