ECO TOPICSエコニクスからの情報発信
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2002.09.01
ECONEWS vol.111

海獣トドの近況

株式会社エコニクス
環境事業部 磯野 岳臣

 アイヌ語Tondoがその語源という説があるトドは、秋の終わりから春までの間、北海道沿岸、特に日本海側や根室海峡に多く姿を見せます。マダラやスケトウダラ、タコなど、人と食性が似ているその巨漢が多数来遊することで、漁業とは深刻な競合状態にあります。近年の北海道沿岸における漁業被害額は10億円を超え、来遊の集中する日本海側では、冬期は休漁する漁家も珍しくありません。トドが「海のギャング」と言われているその背景には、多くの方の深い思いが込められていることと思います。

 トドは、アシカ科トド属で一属一種をなし、北海道を含むオホーツク海、アリューシャン列島、アラスカ湾から東はカリフォルニアまで、北太平洋の辺縁に沿って分布しています。大きさはアシカ科の中でも最大級で、オスでは、実に元大関の小錦さん約3人分の体重800kg、メスでも小錦さんより重い300kg にも達します。

 北海道沿岸への来遊起源は、千島列島やサハリン周辺の島、オホーツク海北部のマガダンから来遊している可能性がありますが、その中でも千島列島中・南部からのものが圧倒的に多いことが近年明らかになってきました。来遊数は、北海道の日本海側だけで400頭程が同時に目視されています。これまで1960年代には、最北端の島、礼文島北部だけで1,000頭に近い数が推定されていますが、この数も今は昔。しかし、近年は局所的に一部の海域に集中するようになり、近海の漁家にはかなりの負担となっているのです。

 これに対して道は捕獲枠付きで猟銃による駆除を許可していますが、銃を向けられるトドも年々賢くなるらしく、手におえない現状はずっと続いています。


北海道近辺のトド繁殖地(★)と来遊模式図