株式会社エコニクス
環境技術研究所 企画開発グループ 安達 大
フワフワと海中を漂うクラゲ。その多くがミズクラゲと呼ばれる種であり、プランクトン(浮遊生物)として、水族館で飼育されているのをご覧になったことがある方も多いことでしょう。しかし、ミズクラゲの生活史は思ったより複雑です。成熟したクラゲから放出されるプラヌラ、着生生活をするポリプ、ストロビラを経て、浮遊生活を送るエフィラ、若いクラゲへと変化に富んでいます。
プラヌラやポリプの主な付着基盤はムラサキイガイやカキなどの殻です。また、桟橋などの人工構造物にも付着するという報告もあり、もしかしたら、みなさまの住む町の港にもクラゲのポリプが生息しているかもしれません。
また、ミズクラゲは、触手から粘液を分泌しており、接触するさまざまな懸濁物やプランクトンを絡めとることから、海水の浄化作用もあることが知られています。また、成人病の予防や脳神経機能の発現に重要な働きをもつDHAやIPAなど、医薬用有効物質が豊富であるとの報告もあります。
一方、近年、世界各地の沿岸海洋域においてクラゲ類が大量発生し、海水浴場の閉鎖、魚類漁獲量の減少、臨海型発電所の取水への影響などの様々な被害をもたらす現象が顕著になっています。また、クラゲが大発生し、定置網に大量に混入してサケなどの漁獲に影響を与えているという報道がされているなど、北海道においてもクラゲの被害は例外ではありません。
北海道におけるクラゲ類の分布・生態についてはほとんど知られていないのが現状です。北海道の周辺海域では、ミズクラゲの他に、キタミズクラゲとよばれる近縁種が生息しており、本州などとは優占している種が違う可能性があります。また、地球温暖化や富栄養化等により、ミズクラゲの来襲現象が北海道まで及んでくる可能性も否定できません。このままで行くと、北海道の海もクラゲだらけになってしまうのでしょうか?
ミズクラゲ(左)とキタミズクラゲ(右)
□海のUFOクラゲ 安田徹(2003) 恒星社厚生閣
□クラゲガイドブック 並河洋,楚山勇(2000)