株式会社エコニクス
環境事業部 陸域環境チーム 伊藤 尚久
今年の7月、イギリスの某人気バッグ・ブランドの「エコバッグ」が日本でも限定販売されました。このバッグは、世界各地でも発売され、各地でこれを買うための行列ができ、取扱店の開店とともに見苦しいほどの争奪戦が繰り広げられました。
このバッグは、「世の中を少しずつ良くするために、日々できることからはじめよう」をテーマに様々な活動を行うイギリスのNPOが、買い物の際のレジ袋に代わるバッグのデザインを有名デザイナーに呼びかけて誕生したもので、有名女優が持ち歩くおしゃれなエコバッグとして話題を集めていました。
最近では、大手スーパー等でレジ袋の有料化が広まりつつあり、消費者にとってもエコバッグは身近な存在になりつつあります。しかし、上記バッグの購入者のほとんどは、実際のスーパーでの買い物には使わず、「おしゃれバッグ」として使っているのではないでしょうか。また、比較的安価でありながら、限定品という希少価値があることから、ネットオークション等により高値で転売するために購入している人も多いことでしょう。
なお、某大手民間研究所が地球温暖化に対する認識度についてリサーチした結果※1、温暖化の原因については、二酸化炭素などの温室効果ガスではなく、「オゾン層の破壊」をあげる人が多かったそうです。また、「個人レベルで解決につながる行動をしているか?」との質問には、「エコバッグ利用」が圧倒的であり、電気やガソリンなどエネルギー消費の抑制をあげる人よりも多かったそうです。
確かに「エコバッグ利用」は資源節約となり、環境にやさしい行為ですから推奨すべきことだと思います。しかし、地球温暖化防止対策として電気やガソリンなどの「エネルギー消費抑制」と比較した場合、その効果はどちらが大きいといえるでしょう・・・
昨年、「不都合な真実」という映画が公開され、温暖化による地球への影響がクローズアップされ、広く市民にそのことが知れ渡り、その恐ろしさと進行スピードに驚きました。
一方、IPCC※2により地球温暖化に関する「第4次評価報告書」が発表されていますが、これらの内容についてどれだけの人達に伝わっているのかが疑問です。本来であれば多くの市民がこの内容について理解し、それぞれが行動に繋げなければならないというのにどういったことでしょう。
来年開催される先進国首脳会議「北海道洞爺湖サミット」では、我が国の地球温暖化対策に対するリーダーシップが問われることになると思います。政府は、「チーム・マイナス6パーセント」というCO2削減のための大キャンペーンを行っており(当社もチームメンバーです)、その言葉の認知度は高まりつつありますが、その理念の浸透はまだまだ不十分といえるでしょう。地球温暖化等の環境問題に対する行動を起こすには、私たち国民一人一人が、現状に対する認識と正確な知識を持つことがなによりも大切なのではないでしょうか。
参考資料:
※1 ニッセイ基礎研究所:「エコバッグ」騒動と地球温暖化
※2 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):気候変動に関する政府間パネル