株式会社エコニクス 環境事業部
生活環境チーム 白𡈽 悠
森の中での深呼吸や森林浴によって、身も心もリフレッシュした経験のある方も多いかと思います。この効果は感覚的に良いというだけではなく、科学的に実証されてきています。
森の中では森林浴などにより、樹木が発散するフィトンチッドと呼ばれる揮発性物質(液体から気体になり易い化学物質)を、身体に取り入れることになります。
フィトンチッドとはphyto(植物)とcide(殺す)からの造語で、言葉からは身体に良さそうな印象はありませんが、森の香りとして知られているものです。これは植物が細菌の感染から自分を守るために放出する分子構造の小さい揮発性のテルペン類(図にテルペン類の例を示します)です。このフィトンチッドを取り込むことで、血糖値・血圧・ストレスホルモンを低下させ、自律神経のバランスを整え、リラックス効果をもたらしていることが報告されています。さらに、ナチュラルキラー細胞(細胞傷害性リンパ球の1種)が活性化されて免疫力が上がり、癌や生活習慣病の予防につながることもわかってきました。
フィトンチッドは植生や地域によって植物の成長度合いが異なりますが、その濃度は一般的に春から夏に高くなります。
最近は登山ブームも下火になったといわれており、山や森林に行く機会も減ってきているのではないでしょうか。森林浴は単にリフレッシュということだけではなく、ストレスを下げ、体のバランスを整え、さらには免疫力を高めて、さまざまな病気の予防につながります。
今年から8月11日が「山の日」となり祝日となりますので、たまには山と云わずとも近くの公園や森林等の自然に触れてはいかがでしょうか。
<参考文献>
武田淳史・近藤照彦・武田信彬・岡田了三・小林 功(2009)森林浴の癒しと健康増進効果について.心臓,41,405-412.
近藤 照彦ほか(2007)森林浴効果の生理学的研究.群馬パース大学紀要4,435-442.
李 卿(2009)森林浴の効果.アンチ・エイジング医学-日本抗加齢医学会雑誌Vol.5 No.3,362-367.
“フィトンチッドと森林浴について”.岐阜県森林研究所.
<http://www.forest.rd.pref.gifu.lg.jp/rd/rinsan/9811gr.html>