自然環境部 海域担当チーム
尾田 崇太朗
道内はようやく気温が下がり、半袖では肌寒い日が増え、秋の訪れを実感しております。しかし、海中ではまだ残暑(高水温)が続いているようで、弊社のライブカメラの映像に映るマコンブは、暑さにやられてぐったりしています。
写真 弊社ライブカメラ前の海藻育成施設の様子(9月中旬)
近年は、猛暑の影響で我々人間が熱中症等で体調を崩してしまうニュースが頻繁に報道されるようになりましたが、海水の高水温化により、海中の生物においても同様な現象が起きているようです。バックナンバー(藻場通信Vol.44)では、高水温によるマコンブの生長阻害について紹介しました。今回は、高水温化が海藻類(特にコンブ類)にどのような影響を与えているかについてお伝えしたいと思います。
マコンブの生育限界温度は22℃以下という報告があります。弊社がライブカメラを設置している函館港が位置する津軽海峡の海水温は2024年8~9月にかけて24~26℃の範囲で推移しており(気象庁HP) 、マコンブにとっては相当な猛暑が続いていると言えるでしょう。
こうした状況は、マコンブの末枯れ時期の加速、母藻や遊走子の活性低下、最終的にはマコンブ藻場の消失につながる可能性があります。
道内では、コンブ類を始めとした寒海性の海藻が減少し、暖海性の海藻が増加している海域もあるようです。そして、全国各地におけるその他の大型褐藻類も減少傾向にあるようで、日本の沿岸域における藻場の種組成が変化してきています。
このままでは、地域特産となっていた海藻が減少・消失し、生態系が崩壊して本来の豊かな海が失われてしまう恐れがあります。
地球規模の気候変動が引き起こす海水温の上昇が海藻へ与える悪影響を完全に防ぐことは非常に困難です。そうした中でも、弊社としては、最良の適応策を模索するため、藻場造成に関する技術開発や環境モニタリングを今後も継続していきます。
図 気象庁:沿岸域の海面水温情報(津軽海峡)
<参考資料>
・馬場将輔(2021)
温暖化による大型褐藻類の生育反応および分布変動
・神谷徳成・和田明・長谷川一幸
マコンブの生育域と水温変動の関係について
・海面水温に関する診断表、データ 沿岸域の海面水温情報.気象庁.< https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/series/engan/engan115.html >
マコンブ、寒冷性、褐藻類、生育限界温度、海水温の上昇、藻場消失