自然環境部 海域担当チーム
伊藤 尚久
近年、気候変動対策の有望な手段としてブルーカーボン(藻場や干潟、マングローブ林などの生態系が吸収・貯留する二酸化炭素由来の炭素)が注目されています。日本では、2050年カーボンニュートラル実現の切り札となるカーボン・オフセットへの取り組みを推進するため、「Jブルークレジット制度」がジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)によって創設されました。ブルーカーボンを定量化し、取引可能なクレジットとして活用する制度であり、2020年から取引が開始されています。
そうした中、今年の3月12日に【昆布の里・南かやべの「函館真昆布」を未来へ繋ぐプロジェクト】がJBEより道内最大量となるブルーカーボン(1,462t-CO2/5年分)の認証を受けました。函館真昆布の名産地である南茅部地区は、昭和40年代からコンブの養殖事業に取り組んでおり、現在は水揚げ量の9割を養殖コンブが占めています。
ちなみに、弊社は上記プロジェクトにおいて現地調査(UAV撮影、コンブのサンプリング・湿重量測定等)やブルーカーボン算定(文献調査含む)のお手伝いをさせていただきました。函館市南茅部地区におけるコンブ養殖事業の特徴は以下の通りとなります。
・促成コンブ(1年生)がメインである。
・コンブを付着させた養成綱の両端を海面上に平行設置した幹綱へ等間隔に設置する(図1参照)。
・陸上乾燥処理に適したサイズ(3m程度)にするため、沖合で葉体端部を切断して海中に残置する(写真1参照) 。

図1 函館市南茅部地区のコンブ養殖施設イメージ

写真1 沖合での葉体端部切断および海中への残置状況
前述した養殖事業の特徴を十分考慮し、JBEが発行する「Jブルークレジット®認証申請の手引き」に記載されている「養殖ロープ施設のロープ長で算定する場合」の計算式に準拠(図2参照)してブルーカーボンを算定しました。さらには、今後漁業者自らが調査を実施して継続的に認証申請できるようにマニュアルも作成しました。

図2 函館市南茅部地区におけるCO2吸収量の算定式
弊社は、この実績を活かし、今後も道内各地域におけるブルーカーボンへの取り組み活動に貢献していきたいと考えております。
【参考文献】
「J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて」. 環境省.
< https://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset.html >
「南茅部地区の養殖コンブによるJブルークレジットの認証について」. 函館市.
< https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2025031100022/ >
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