身近な製品にも使われてきた「PFAS」。健康や環境への影響が注目され、規制と代替への動きが進んでいます。
株式会社エコニクス 電力環境部
生活環境チーム 小林 松嗣
最近、ニュース等で「PFOS」や「PFOA」という物質について聞いたことがある方も多いと思います。有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称して「PFAS」と呼びます。
PFASの中でも、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、幅広い用途で使用されてきました。
これらには難分解性、高蓄積性、長距離移動性(環境中を広範囲にわたり移動)という性質があります。急性的な毒性は高くありませんが、長期間にわたり体内にとどまり続け、健康に影響を与える可能性が示唆されていることもあり、近年規制が強化されています。
特にPFOAについては、水や油、汚れをはじく性質を持っていることから、かつては次のような身近な製品にも使用されていました。
・フライパンなどのコーティング加工
・アウトドア用防水ウェア
・撥水スプレー、防汚加工剤
・泡消火剤
・一部の紙コップや食品包装紙

現在、国内では「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)における「第一種特定化学物質」に指定され、製造・輸入等が原則禁止されています。
また、国内での製造・輸入禁止に先立つ企業の自主的な取組で、それ以前からこのような用途での使用はすでに全廃されています。
近年では、「PFASフリー」を掲げ、PFOS、PFOA以外も含めた有機フッ素化合物からの脱却への動きが加速しています。
一例として、身近な衣料品等のメーカーでも次のような動きがあります。

国内では、2026年4月1日から省令改正により、水道水質管理目標においてPFOS及びPFOAの水質基準(合算値で50ng/L)が設定されます。2020年度に設定された暫定目標値(合算値で50ng/L)から値はそのままに扱いが引き上げられたことになります。
PFASについてはPFOS、PFOA以外にも1万種類以上の物質があるとされており、今後も段階的な規制の強化が行われていくものと思われます。
利便性の高かったPFASへの依存から脱却する動きが加速することで、身の回りにある様々な製品の素材についても代替品への移行が進んでいくと思われます。それに伴い、見た目や機能が変わらずとも価格が上がる商品を目にすることもあるかもしれません。PFASは分解されにくく一度環境中に放出されると長期間にわたり残り続け、環境に影響を与えます。わたしたち、一人ひとりが、製品の情報や各メーカーの取り組みを知り、環境に配慮した商品を選択することが安心・安全で持続可能な社会をつくる第一歩になるでしょう。
参考資料
1)有機フッ素化合物(PFAS)について (環境省HP)
https://www.env.go.jp/water/pfas.html
2)「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」及び「水道法施行規則の一部を改正する省令」の公布等について(環境省報道発表資料)
https://www.env.go.jp/press/press_00075.html
3)3M、2025 年末までに PFAS 製造から撤退(スリーエムジャパン株式会社)
https://multimedia.3m.com/mws/media/2266376O/news-release-20221228.pdf
4)次世代GORE-TEX プロダクト
https://www.gore-tex.com/jp/new-products
5)PFAS不使用で製造 | パタゴニア | Patagonia
https://www.patagonia.jp/our-footprint/pfas.html
6)雨をはじいて快適、しかも安全なLifeWear。|UNIQLO TODAY’S PICK UP
https://www.uniqlo.com/jp/ja/news/topics/2024112901

