ECO TOPICSエコニクスからの情報発信
エコニクスからの情報発信
2025.06.02
エコ森林通信 vol.41

「地域生物多様性増進法」が施行されました!

自然環境部 陸域担当チーム
米田 豊

 「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律(地域生物多様性増進法)」が、2025年4月1日に施行されました[1]
🌲「地域生物多様性増進法」施行の背景
 生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を踏まえ、我が国では、「生物多様性国家戦略2023-2030(新国家戦略)」を策定しました。この新国家戦略では、2030年までに自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる、「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の実現を掲げ、陸域と海域の30%以上を保全する「30by30」を目標の一つとしました。
 「30by30」の実現には、国立公園等の保護地域の拡張に加え、里地里山、企業緑地や都市緑地等を生物多様性の保全に資する地域(OECM)とすることが必要です。このため、生物多様性の保全が図られている区域を国が認定する「自然共生サイト制度」が2023年度から開始されました。そして、「ネイチャーポジティブ」の実現には、既に生物多様性が豊かな場所を維持することに加えて、生物多様性を回復し、または創出する「生物多様性の増進活動」が重要であるとの考えの基に施行されたのが「地域生物多様性増進法」です。

出典:IUCN日本委員会(https://www.iucn.jp/explanation/nature_positive/)

🌲「地域生物多様性増進法」の概要
 「地域生物多様性増進法」では、豊かな生物多様性が人類存続の基盤であり、国・地方公共団体・事業者・国民・団体等が密に連携して生物多様性の増進に取り組むことを基本理念としています。主な措置事項としては、企業等が作成する「増進活動実施計画」および市町村が地域の多様な主体と連携して作成する「連携増進活動実施計画」の認定や、長期安定的な活動実施のために市町村・活動実施者および土地の所有者が締結する生物多様性維持協定等について定めています。これらの認定には法律上の特例措置が設けられ、自然公園法・森林法・外来生物法等の手続をワンストップ化・簡素化することが可能となりました。
 また、これまでの「自然共生サイト制度」では、生物多様性が保全されている”区域”が認定されるのに対し、「地域生物多様性増進法」では、特定の場所に紐づいた生物多様性を増進する”活動実施計画”が認定対象となり、活動の区域を「自然共生サイト」と呼ぶことになりました。これらの活動には、生物多様性が豊かな場所でこれを維持する活動に加えて、生物多様性の回復・創出も対象とされ、活動場所の生物多様性が豊かになり、生物多様性の価値基準に合致した時点でOECMとして国際データベースに登録されます。これらの取組は「30by30」の達成にも貢献することになります。
 なお、本法の施行に伴い、これまで国の制度として認定された「自然共生サイト」は、「地域生物多様性増進法」に一本化され、本法の施行以前に認定されていたもの は、移行申請が必要となります。弊社は、「エコニクスの森林[もり]」の自然共生サイト認定実績(移行申請中)[2]を活かし、自然共生サイト認定支援サービスを展開しておりますので、ご興味のある方はぜひご相談ください。


[1]地域生物多様性増進法の施行及び同法に基づく申請の受付開始について. https://www.env.go.jp/press/press_04681.html
[2] 認定サイト一覧. https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/kyousei/nintei/index.html

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エコ森林通信vol.41