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エコニクスからの情報発信
2026.03.01
ECONEWS vol.393

「極端気象の時代へ」―北海道が直面する水資源リスク

この冬、北海道では道路に雪がない日が増え、雨が降る地域もありました。
長く北海道に暮らしてきた私たちにとって、この光景は決して「一時的な異変」ではありません。気象データは、気温上昇、降雪量の減少、短時間強雨の増加といった気候変動の長期傾向をはっきり示しています。
そして今、その影響は北海道の“水のかたち”を変え始めています。

株式会社エコニクス 電力環境部
生活環境担当チーム 山崎 浩之

 私の住む地域では年々降雪が少なくなっており、道路の路肩に雪がほとんどなく、アスファルトが所々見える状況です。長年北海道で暮らしてきましたが、今冬は雨が降る日もあり、いつもの冬景色とは異なる様子を迎えています。毎年変化していくこの気候に、何とも不思議な感覚で過ごしています。

2023年元旦撮影

2026年元旦撮影

 北海道は近年、気候変動の影響が顕著になっており、特に「無降水日」の増加と冬季の降雪・積雪量の減少傾向が深刻な問題となっています。札幌管区気象台の資料によれば、夏季の平均気温は過去100年で約1.46℃、春は2.18℃、冬は2.02℃上昇しており、極端な気象現象の頻発が確認されています。短時間強雨(1時間に30mm以上)は10年当たり約6.9回増加し、大雪日数や最深積雪も減少傾向にありますが、局地的には逆に記録的豪雪が発生するケースも見られます。1)
 また、北大・JAMSTECらの研究によると、地球温暖化が進行する近未来(2030~2050年)において、極端な降雨の強度は増加し、さらに「連続無降水日」の数も増大する見通しです。これは農業や水資源管理において、極端な渇水リスクが高まることを意味します。 2)・3)

 気象庁札幌管区気象台の報告では、1979〜1988年と2014〜2024年を比較した場合、北海道内のアメダス観測で短時間強雨の発生回数は1.5倍に増加しています。4)
さらに、北海道大学の研究論文では、石狩川流域の将来的な年最大3日降雨量は、将来1.2倍以上に増加すると予測されており、治水・利水対策が急務となっています。5)

 これらの降雪量減少と降水パターンの変化は、夏季の河川流量に大きな影響をもたらしています。特に石狩川や豊平川流域では、4~6月の融雪による流量ピークが前倒しとなり、その後の夏季に水量が低下する傾向が顕著です。これが農業用水の不足や都市部の水道供給リスクを高めており、札幌市では豊平川水系への依存度が高いため、渇水対策の強化が課題となっています。6)

 こうした現状を受け、北海道内では多様な対応策が進められています。まず、ダムの事前放流による流量調整や貯水管理の高度化が図られ、農業用水の利用効率を高める取組みも推進されています。さらに、地下水の持続的利用を図るための規制強化や、気候変動を見据えた長期的な水資源戦略の策定が急ピッチで進行中です。気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)などでは、水資源や農業、自然災害防止に関する将来予測データが提供され、水資源管理の科学的な裏付けが整いつつあります。7)

 また、環境省や北海道立総合研究機構による研究では、雪の減少、融雪時期の前倒しが農業・自然、生態系に及ぼす影響を評価しており、農作物の収量・品質や野生動物の生態に変化が現れることが指摘されています。これに対応する形で、農業技術の革新や観光・インフラへの防災策が検討されています。8)

 結論として、北海道は豊富な水資源に支えられてきた地域でありながら、気候変動による降水・融雪パターンの変化を契機とした渇水リスクが顕在化しています。今後は、正確な気象・水文データに基づいた予測分析と、地域特性に合わせた水資源管理の強化が不可欠です。農業・都市生活・産業活動を支える安定的な水供給を維持するには、地方自治体、国、そして地域住民が連携し、科学的根拠に基づいた総合的かつ長期的な取組みを進めていく必要があります。弊社でも日頃から河川・海域の調査を行っており、その調査結果は地域の水供給維持の一端を担っていると自負しております。今後はより一層、この取組みに注力して、水資源の管理の安定的なデータ提供に務めたいと思います。


参照元


• タイトル:北海道の気候変動と近年の天候(2025年5月30日)北海道HP 1)
• URL:https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/1/1/6/8/0/0/5/6//【資料1-4】北海道の気候変動と近年の天候(気象台).pdf    (R7.5.30)地球温暖化に対応する技術開発・普及に関する検討会【気象台資料気候】

• タイトル:JAMSTECなど、RCP8.5シナリオにおける近未来の降水量変化を予測|環境展望台:国立環境研究所 2)
• URL:https://tenbou.nies.go.jp/news/jnews/detail.php?i=26162 [jamstec.go.jp], [tenbou.nies.go.jp]

• タイトル:Intensive heavy rainfall and dry days likely to increase 3)
• URL:https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20190110/, [pressrelea…epoint.com] JAMSTEC | 海洋研究開発機構 | ジャムステック

• タイトル:気象庁 札幌管区気象台「北海道地方のこれまでの気候の変化(観測結果)」4)
• URL:https://www.jma-net.go.jp/sapporo/tenki/kikou/sp_ccreport/hokkaido/observation.html 

• タイトル:「北海道石狩川流域に年最大降水量をもたらす気象概況」:土木学会北海道支部 5)
• URL: http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00057/2015/71-B-0003.pdf 

• タイトル: 気候変動に伴う積雪地域の水利用への影響:J-STAGE 水文・水資源学会研究発表会要旨集(第23回) 6)
• URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshwr/23/0/23_0_45/_pdf/-char/ja  

• タイトル:気候変動適応情報プラットフォーム(A PLAT)
気候変動影響と対策2-1 さまざまな分野への影響 7)
• URL:https://adaptation-platform.nies.go.jp/climate_change_adapt/adapt/a-0201.html 

• タイトル:北海道の気候変動影響とその適応策に関する研究 ~雪の変化を中心に~ 8)
• URL:https://www.env.go.jp/content/000281152.pdf [env.go.jp]

上記URLとタイトルは、本文中に登場した各統計・予測・報告に対応した公式資料や報告文書です。