株式会社エコニクス
取締役顧問 川村 一廣
深層水の低温・定温性を活用して、海水、淡水、空気などを温度制御することが可能で、水産、農業、住居など多様な利用が可能です。ハワイではイチゴの栽培や建物の冷房にも使われています。日本でも、温度5~20℃程度の範囲で温度コントロールをすることによって、野菜、キノコなどの農産物の栽培、苗木の育成、冷蔵、冷房など多様な分野での技術開発が可能であると考えられます。
熱帯海洋の上下62℃の温度差を利用して発電させる技術は基本的に確立されており、赤道太平洋上のナウル共和国で日本の技術により120kWの発電に成功した事例もあります。大量発電に必要な深層水の大量取水技術やコストの低減などに問題点が残されています。温度差発電は深層水と温泉水の組み合わせでも可能性はあります。
また、深層水の清浄性を活用して汚染されていない淡水を製造する事ができます。深層水に微量に含まれる有用物質と清浄性を活用して、医薬品や健康飲料水などの製造なども可能性があると言われています。実際に高知県では深層水の入っている飲料水が試作されています。
深層水の利用技術開発研究は、まだ初歩の段階であり、今後広範な分野での開発研究が必要です。クリーンで無尽蔵な未利用資源である深層水が、21世紀の人類の生活の発展にとって、非常に重要な役割を担う有用資源に転化する無限の可能性を持つことは明かです。現在、深層水の技術開発拠点は高知県と富山県の2箇所しかありませんが、さらに日本各地に開発拠点ができて、地域特製に対応しながら多様でかつ総合的な技術開発をすることが強く望まれます。