ECO TOPICSエコニクスからの情報発信
エコニクスからの情報発信
2020.12.01
ECONEWS vol.330

カキ中間育成施設について

株式会社エコニクス 常務取締役
藤井 淳夫

 

 弊社は、道東のカキの中間育成施設の計画・設計に平成5年(1993年)から携わっています。その施設の主要な部材は、幹綱、係留索、浮子(アバ)、アンカーブロック(図-1)で、幹綱に育成篭(写真-2)をぶら下げる垂下式と呼ばれる構造様式です。区画漁業権が設定されている水域に収まるように、必要な施設数や施設相互の間隔など、お客様の希望も聞きながら設計基準に則って組み立てていきます。

 設計にあたっては、1本当りの垂下連の質量、海・潮流及び波により作用する流体を適切に算定し、施設に連結されている垂下連及びその他構成部材による総加重により構成材料が破損や沈没、流出が生じないよう、十分な強度並びに安定性を有する設計とすることを原則とします。

 
写真-1 道東の対象海域(筆者撮影)


図-1 一般断面図(参考図)


写真-2 漁業者による育成篭の垂下準備状況(筆者撮影)

 

 具体的には、まず、ロープ類の種類ですが、色も形も様々なものがありますが、もちろん人の手で取扱可能な太さ(径)を考えながら必要な引張強度の有するものを選択します。浮子(アバ)についても必要な浮力の他に材質や色、ロープの固縛を考えた形状のものを選択します(写真-3)。

幹綱用と係留索用のロープは、浮きロープを選定します。幹綱は、一般的な一巻き200mものを引張強度を考慮して選定します。係留索のロープは、引張強度は勿論、長さに関しても形状維持の他に育成篭を漁船上に引き揚げて各種作業ができる長さを計算にて決定します。ロープや浮子の選定など施主(特に部会の漁業者)と相当な協議を重ねて決定します。それと問題はアンカーブロックです。育成施設が所定の場所で滑動や転倒しないかがアンカーブロックの形状と重量に掛かっています。場合によってはアンカーの代わりに杭の場合もあります(図-2)。
 

 

写真-3 浮子(アバ)の形状(カタログより抜粋)

 

 

図-2 一般断面図における使用材料一覧(筆者作成)

 

 コンクリート製のアンカーブロックの製作は陸上で行われます。広い製作ヤードが必要となります。完成したアンカーブロックは、係留索を取付けた上でクレーン付き台船にて所定の海域に運搬、沈設します。海上ではDGPSで正確に位置を計測し、所定の位置に設置します(写真-4)。

 係留索が事前に取付けられたアンカーブロックですので、あとは幹綱を固縛して引渡しとなります。その後は、漁業者が浮子と育成篭を取付けて施設として完成します(写真-5)。

 

    
写真-4 アンカーブロックと沈設作業状況(筆者撮影)


写真-5 表面浮子取付状況(筆者撮影)

 

 海面に見えているのは浮子だけですが、その下にはカキを育てるための種々の部材が支え合っています。これら全てが波浪や流れ、摩耗に耐えて、または金属の場合は腐食に対しても基準書に則りしっかり選定・計算することが結果として「豊満で美味しいカキ」の成長を促すことに繋がることを今回ご紹介しました。

 


「英雄カキを好む」と言われています。