北海道大学農学部応用生命学科
助教授(農学博士) 橋床 泰之
海で眠るイカ?
実は、イカタケというキノコ。
キノコを探すときは、広葉樹の林床に生えるカタクリなどの植物を踏み荒さないように足元に注意を払って歩きましょう。すると、落ち葉に見えかくれするキノコも不思議と見えてきます。キノコ探しのコツは、散策を楽しみながら2年計画で発見して行くこと。そして、自分で探し採取する。これが大原則です。古くからキノコを食文化に取り入れてきた東北地方などでは、マイタケなど大物の秘密の穴場は、親兄弟といえども絶対に教えないという不文律があります。
キノコの多くは、倒木や落ち葉を分解し、腐植土壌の形成に大きな役割を果たしています。キノコが造るこの腐植土壌こそ、きれいで豊かな水を育む源であり、ひいては海の生命を養う根源となっています。また、キノコの多くは樹木と根外寄生の関係をつくっており、植物の根の発達を促します。そのため、樹木の生長促進つまり森の育成に大きく寄与しています。山に生きる者も海に生きる者も、キノコをまたいでは通れません。食べるべきです。
キノコはほとんどノンカロリーで、グルカンを中心とした食物繊維の塊ですから、当然ながらダイエットを望んでおられる向きには最適の食べ物です。が、エノキタケを油炒めにした場合は、油分のカロリーがばかにならないので、エノキタケは鍋に限ります。
食物繊維は大腸ガンを予防する効果があると云われているため、深酒をする人や肉を多食しながら野菜をあまり食べない人は、キノコを食べることをお勧めします。ただし、ヒトヨタケとかホテイシメジなどは、酒の肴にするときに限り中毒するので気を付けて下さい。また、キノコからは多様な滋養強壮薬や制ガン剤の原料が得られます。それにもかかわらず、海藻類とともに最も有用成分の研究が遅れているのがキノコであり、その原因としては種の同定が難しい、栽培が難しい、採取できる期間が短い、などが挙げられます。