株式会社エコニクス
参与 駒木 成
海の肥料含量(現存量)は、植物や微生物の取り込み消費量と海からの補充量との収支結果。 前号で述べた様な海の主な肥料のうち、窒素系は無機3態窒素塩(アンモニア塩・亜硝酸塩・硝酸塩)ですが、その内訳を見ると、取り込まれ易いアンモニア塩の含量は不安定、薬害を起こし易い亜硝酸塩の含量は少なく、硝酸塩の含量は水温と反比例します。つまり、硝酸塩の含量は年間の最低水温時に最高となり、昇温につれて低下します。また、主な有機窒素系の肥料である尿素の含量は、筆者の研究経験では低水準で安定するのが普通です。また、主なリン系肥料とされるリン酸塩の含量は水温と反比例します(有意性は硝酸塩の例よりも若干劣る)。リン酸塩と硝酸塩との含量を較べると、リン酸塩の方が一般に低くて変動が小さく、両者の含量は正比例します。
次に、北海道をかこむ海の肥料の様々な特徴を紹介します。
硝酸窒素の消費割合
この沿岸域の窒素系肥沃類型は、高肥沃度外洋性、高肥沃度内湾性、低肥沃度外洋性、低肥沃度内湾性の四つに分ける事ができます。また、沖合いの外洋水について有光層内の硝酸窒素の消費割合を比較すると、津軽暖流水(1)<対馬暖流水(1.3)<西カラフト沿岸水(2.3)<オホーツク海混合水(6)<親潮沿岸分枝水(8.4)で、寒流系は暖流系の約8倍も窒素消費割合が高いようです。
次に、水温対硝酸窒素の統計式から石狩湾(50~499m深)と釧路沖(0~100m深)を選び、昇温と肥料減少傾向を較べてみます。水温5℃の時、石狩湾では113Nug/L、釧路沖では140Nug/Lです。水温10℃の時、石狩湾では11Nug/L、釧路沖では67Nug/Lです。昇温による肥料減少割合が著しい日本海沿岸では、昭和59年1~3月にかけて20年来の低水温に見舞われ、コンブの繁茂も全般的に身好でした。これも、低温・高肥沃の深層水を含んだ対馬暖流変質水の効果と思われます。