ECO TOPICSエコニクスからの情報発信
エコニクスからの情報発信
2019.06.01
ECONEWS vol.312

サスティナブル・ツーリズム

株式会社エコニクス 経営管理部
構造改革担当 佐藤 直樹

 

 ここ最近、観光地や主要都市などに行くと、外国人の方を多く見かけるようになりました。特にアジア系の方が多く、日本人観光客に溶け込んで一見すると外国人とはわからない時もありますが、日本語ではない会話を聞いて改めて多くの方が訪日されていると気が付きます。

 平成30年度版観光白書によると、2017 年の訪日外国人旅行者数は、過去最高であった2016 年の2,404万人を更に上回る2,869 万人で、5年連続で過去最高を更新し、2020年4,000 万人の目標に向け堅調に推移しています。また、外国人旅行者の増加の要因は、観光を地方創生の切り札とし、我が国の成長戦略の柱と位置付けて様々な取り組みを実行した成果によるものと分析されています。

 こうした訪日外国人旅行者の増加に伴い、国際収支における旅行収支は改善し、2015年に1962年以来53年ぶりの黒字(1兆902億円)に転化し、2017年は過去最大であった前年(1兆3,267億円)からさらに黒字幅を拡大し、1兆7,809億円の黒字となっています。

 また、訪日外国人旅行者の消費動向をみてみると、「モノ消費」※1から「コト消費」※2へ移行してきている傾向がみられ、娯楽やスポーツ、自然や文化を観光資源としたエコツーリズムなどへのニーズが高まってくることが予想されます。

 

 国連世界観光機関(UNWTO)によると、国際観光客到着数は、新興国の経済成長や格安航空会社(LCC)の事業展開を受け、2017年は過去最多の13億人となり、2030年には18億人に達すると予想されています。

 日本においては、近隣アジア諸国を中心とした外国人旅行者数が増加しており、今後の観光ビジネスに大きな期待が持てる一方、観光客の急増による弊害として、オーバーツーリズム(観光公害)※3が問題化してきています。

 オーバーツーリズムは、バルセロナやヴェネツィアなど世界中の著名な観光地で問題化しており、日本でも京都や鎌倉などで顕著で、各国において入場料等の設定、入場の制限・規制、観光客の分散化など様々な対策がとられています。

 

 こうした背景から、 国連では2017年を「開発のための持続可能な観光の国際年」と定め、UNWTOは、環境・経済・地元社会の3つの側面において適切なバランスが保たれることが持続可能な観光の実現にとって重要であるとしています。

 持続可能な観光=「サスティナブル・ツーリズム」は、訪問客、産業、環境、受入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の経済、社会、環境への影響に十分配慮した観光と定義され、地域の環境や自然、文化を切り売りするのではなく、それらを守りながら本物の自然体験などを提供していくことが重要となってきます。

 また、国連の関係機関であるグローバル・サスティナブル・ツーリズム協議会(GSTC)は、国際基準であるサスティナブル・ツーリズム認証制度を進めており、「ホテル向け」と「ツアー旅行会社向け」の2つの基準を定めています。

 まだ日本国内では普及が進んでいませんが、欧米豪ではサスティナブル・ツーリズムに対する意識が高いため、訪日観光客の増加とともに、今後は注目されてくると思われます。

 

 私も年に一度は観光地で休日を過ごしますので、観光地を訪れる際には今まで以上に、経済、地元社会、環境影響に配慮し、自然や文化を堪能して充実した余暇を過ごしたいと思います。

 

 

※1「モノ消費」:モノを所有することに価値を見出す、欲しいモノを買うことが目的の消費。
※2「コト消費」:商品やサービスを購入したことで得られる体験に価値を見出す、何かをするコトが目的の消費。
※3オーバーツーリズム:一般的に、観光地に過度に観光客が来ることで、自然環境、経済、社会文化に負荷を与え、その結果観光地の価値は下がり、観光客の満足度を下げてしまう問題事象