株式会社エコニクス 環境企画部
事業企画チーム 田村 勝
北海道におけるなまこの漁獲金額は、1990年代には6億円前後で推移していましたが、中国における需要拡大、単価高騰により、2010年と2011年には100億円をも超過する水産重要種として急成長しています(図1)。漁獲量は1992年の約1,000トンから2008年には約2,800トンまで増え、その後も2,000トンを超える漁獲が続いており、資源の枯渇が心配されるようになりました。そこで、道内の各地域では種苗放流によりマナマコ資源の増大をはかる取り組みが盛んとなっています。地域によっては、マナマコ資源を維持するために種苗を他地域から購入し前浜に放流する取り組みもされていますが、毎年の購入費を考えると地域にとっては大変な負担になることから、地域が自ら種苗を生産できることが理想的です。
道内でマナマコ種苗生産を行っている場所は、平成24年度時点で27機関2)にのぼり、ウニ・アワビ等の専門の種苗生産施設の活用から、最近では漁港の荷捌き所等を利用し簡易な施設でも種苗生産が行われています。
弊社では、今年度から、地域が主体となって行う簡易な施設を用いた種苗生産を支援する取り組みをはじめました。この利点は、設備投資が少なくてすむことと、地域(漁業者)が自ら取り組めるところにあります。この方法では、採卵から約2週間の飼育により体長約0.4mmの種苗(着底稚仔)を生産することが可能です。育てた種苗は、地域の実状に応じて中間育成やそのまま放流することも可能です。一般には、放流サイズが大きいほど放流効果は高くなると考えられていますが、一方で大型種苗の生産には労力がかかり生産コストが高くなってしまうため、現時点ではどのサイズで放流するのがよいか決まっているわけではありません。放流後の生き残りと生産コストのバランスを考え、経済的に最適な放流サイズを検討する必要があるでしょう。
今後は、放流効果をいかに高めるかが課題となります。このためには、放流後の追跡調査により放流サイズや放流場所の条件別に生き残りを明らかにする必要があります。また、放流適地の生息環境評価(流動環境、餌環境、海底地形・底質、外敵生物等)も有効となります。弊社では、長年にわたり海の環境を調査してきたノウハウを生かし、これらの課題をお持ちの地域に対し少しでもお役に立てればと考えています。
<参考資料>
1)“マリンネット北海道”.地方独立行政法人北海道立総合研究機構 水産研究本部.<http://www.hro.or.jp/list/fisheries/marine/h3mfcd0000000ge0.html>
2) 北海道立総合研究機構栻培水産試験場・東北大学大学院農学研究科(2013)マナマコ放流用種苗生産指針.