株式会社エコニクス
環境事業部 陸域環境チーム 伊藤 尚久
先日(7/27)、「人食いザメ」として知られる南方系のホホジロザメが、サハリン沿岸で捕獲されたというニュースが報道されました。沿岸2km付近のカラフトマスの定置網にかかっており、全長4.7m、重さは推定1tの巨体だったそうです。サメは間もなく死亡し、解体した結果、胃からアザラシが確認されたとのことでした。
なお、ホホジロザメについては、北海道後志管内古平町沖での捕獲記録があり、本種の行動範囲の北限とされていました。上記報道に対する専門家の見解では、「ホオジロサメは水温10℃以下の海域を行動範囲とすることはないことから、地球温暖化による海水温度の上昇で、行動範囲が北上傾向にあるのではないか?」とのことでした。
また、前述したサハリンが面するオホーツク海は、海氷が形成される世界中の海の中で最も低緯度に位置する海域です。そのオホーツク海の冬の風物詩「流氷」については、近年、その海上表面積が減少傾向にあるとの報告があります。
それに関して、2006年、北海道大学の研究グループにより、知床沖のオホーツク海の「中層水」(水深400~800m)の水温が、この50年間で最大0.6℃上昇しているとの発表がありました。この研究グループでは、「温暖化で流氷ができにくくなり、中層水を温めたのが原因ではないか?」と推測しています。
シベリア東部沿岸で流氷が形成されると、そこの海水はさらに濃い塩分濃度の水となり、密度の関係で海面から水深数百mに沈みこみ中層水になります。その中層水はオホーツク海を南下し、北方領土付近を経由して北太平洋にまで到達しています。
このまま流氷の減少が続くと、中層水の沈み込み量も減り、それによってシベリアからオホーツク海にもたらされる植物プランクトンに必要な鉄分等の栄養塩輸送量も減ることで、北太平洋の生態系や漁業資源への影響が危惧されています。
ちなみに、上記中層水を0.6℃上昇させるのに必要なエネルギーは、同じ量の空気であれば約100℃上昇させるエネルギーに相当するそうです。地球温暖化については、高緯度ほどその程度が大きいとされており、日本最北で生活している我々北海道人は、日本中で最も地球温暖化による影響を身近に感じているともいえるのです。