ECO TOPICSエコニクスからの情報発信
エコニクスからの情報発信
2016.05.01
ECONEWS vol.275

北海道における鳥類の分布型3

株式会社エコニクス 顧問
 藤巻 裕蔵

 これまで、北海道の鳥類の分布型にはおもに三つあることを述べ、そのうち北海道全域に分布する型(例としてアオジ)とおもに西部に分布する型(例としてクロツグミ)を紹介しました。今回は三番目のおもに東部(大雪山系と日高山脈を境にして)に分布する型について述べます。
 このグループの代表的なものはコアカゲラです。このキツツキは留鳥で、日本では北海道だけに生息し、利尻島と色丹島で記録されたことがあります(日本鳥学会 2012)。コアカゲラは西部でもまれに観察されることがありますが、おもに東部に分布しています(図1)。ただし、非常に生息密度が低いため観察される機会は他のキツツキ類に比べると少ないです。キツツキ類は森林性ですが、コアカゲラは山間部の大面積の森林よりは、むしろ農耕地内の孤立林や防風林に生息しており(藤巻 2015)、市街地でも学校の校庭周囲にある樹木や寺社境内のように樹木の多い環境で繁殖することもあります。この点は同じ小型のキツツキであるコゲラがおもに山間部の森林に生息するのと違うところです。この2種のキツツキの体の大きさはほぼ同じで、樹木の枯れたり腐朽して軟らかくなった部分に巣を造るなど生態も似ているので、分布域を違えて競合を避けているのでしょう。
 コアカゲラのようにおもに東部に分布する種は、今のところほとんどいません。しいて挙げれば、コシジロウミツバメ、エトピリカ、チシマウガラスといった海鳥でしょう。このほかカワアイサが東部でよく観察される傾向がありますが、ややデータ不足です。現在、タンチョウやシマフクロウはおもに東部に生息していますが、これは生息数が減少したときに、おもに東部で生残ったためで、かつては西部にも生息していましたし、最近では生息数が増加に伴い西部にも分布を広げているので、おもに東部に分布する種には該当しないでしょう。


図1 北海道における繁殖期のコアカゲラの分布
●=コアカゲラの記録あり,〇=調査・観察したが,コアカゲラが記録されず,・=調査・観察記録がない.

 

<引用文献>

藤巻裕蔵(2015)北海道中部・南東部におけるコゲラとコアカゲラの繁殖期の生息状況.森林野生動物研究会誌. 40:1-6.
日本鳥学会(2012)日本鳥類目録改訂第7版. 日本鳥学会, 三田.