株式会社エコニクス
環境技術部 陸域環境グループ 藤田 玲
春の訪れとともに道端でタンポポをよく目にします。
野原一面に咲いて北国に春が来たことを感じさせてくれますが、そのほとんどは帰化植物であるセイヨウタンポポです。最近ではもともと北海道に生えているエゾタンポポを見ることが少なくなってしまいました。セイヨウタンポポが一面に黄色い花を咲かせる風景を、私たちは身近なものと感じていますが、南の島ハワイではこのような帰化植物が大きな問題になっているようです。
ハワイは大陸から離れた小さな島です。火山活動によって海中から噴き出した溶岩でできた島で、熱い溶岩が冷え固まり大地となった頃には何も植物の生えていない島でした。やがて何百種もの植物の種子が風や海流によって運ばれ、たどり着いた植物が島という隔離された環境で進化した結果、ハワイでしか見られないいくつもの植物が生まれました。しかし近年、人間の活動のためにさまざな植物が持ち込まれ、それらによって今までそこに生えていた植物が駆逐されつつあります。長い間島という限られた場所で進化してきた植物は、大陸から入り込んだ新しい生活様式を持った植物との競争に負けてしまうのです。国立公園の職員は帰化植物がこれ以上増えないように、見つけしだい鉈で刈り取るという作業を続けています。
このようにハワイでは帰化植物の問題は深刻になっています。日本の場合、帰化植物が今まで生えていた植物を駆逐するというよりも、人間が彼らの生育に適した場所(裸地)を増やしているため、帰化植物が増えているというのが現状です。都会に住む者にとって帰化植物は親しみのある身近な植物でもあり、すでに生活している帰化植物をなくすことは難しいので、彼らとのうまいつきあい方を考えなくてはなりませんね。