ECO TOPICSエコニクスからの情報発信
エコニクスからの情報発信
2015.02.01
ECONEWS vol.260

国内外での海の再生エネルギー利用技術

株式会社エコニクス
山下和則

 東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故は、我が国のエネルギー政策を根本から揺るがす一方、再生可能エネルギーに対する国民の期待はこれまでになく高まっています。国土面積では世界第61位に対して、排他的経済水域面積第6位の日本において、海の再生可能エネルギーを活用することはとても有効です。海洋エネルギーを利用した発電には、波力、潮流、潮汐・海流、温度差発電がありますが、海洋エネルギー技術の開発研究件数は、イギリスが最も多く(2011年で潮流と波力の46件)、次いでアメリカ(17件)、日本は少なく4件(波力のみ)しかありません。
イギリスでは早くから積極的に取り組んでおり、スコットランドのオークニー諸島にEMEC(European Marine Energy Center)という広い実証試験場を設置して企業の技術開発を推進しています。日本からは川崎重工業株式会社などがここで研究開発を行っています。
一方、日本では、昨年の7月に政府機関である総合海洋政策本部が主体となって海の再生エネルギー利用開発の実証場所が選定され(表1)、今後の技術開発が期待されます。この中で、沖縄県久米島町での海洋温度差発電(Ocean Thermal Energy Conversion (OTEC))について紹介します。

表1 海洋再生可能エネルギー実証フィールドの選定結果(総合海洋政策本部HPより)

都道府県 海域 エネルギーの種類
新潟県 粟島浦村沖 海流(潮流)、波力、浮体式洋上風力
佐賀県 唐津市 加部島沖 潮流、浮体式洋上風力
長崎県 五島市 久賀島沖 潮流
五島市 椛島沖 浮体式洋上風力
西海市 江島・平島沖 潮流
沖縄県 久米島町 海洋温度差

 OTECは、太陽からの熱エネルギーにより温められた表層海水と海洋を循環する冷たい深層海水との温度差をタービン発電機により電力に変換する発電の1つです。図1は表層海水と深層海水1,000mとの温度差分布を表したものです。日本の経済水域内の熱エネルギーの総量は、106,000TWhと試算されており、この内1%を電力として取り出した場合でも発電電力量は1,060TWhとなり、日本の年間電力需要を賄える規模となります。これは約1億トンの石油に相当するエネルギー量です。


図1 世界の表層海水と深層海水(水深1,000m)との平均温度差分布(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO再生可能エネルギー技術白書(第2版)より)

 次号では、久米島でのOTEC実証試験の紹介と、海の再生可能エネルギーの1つとして北海道で可能性の高い浮体式洋上風力について考えてみたいと思います。