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2022.10.31
藻場通信 vol.22

基質上に着生したコンブの移り変わり

自然環境部 海域担当チーム
工藤 俊樹

 藻場造成において、コンブ群落を維持するために必要な環境条件は様々あり、基質もその一部と考えられております。 「藻場通信 Vol.13」にてご紹介しましたコンブの栽培試験の中で、ライブカメラ前の施設で基質として設置していたコンクリート板を新しいものと交換してから1年が経とうとしてます。今回は、新しいコンクリート板上に着生したコンブがどのように遷移しているのか振り返ります。
設置されて間もない頃のコンクリート板は表面に珪藻が見られるだけでした(写真1)。

写真1 設置後間もないコンクリート板(2021年12月29日)

4ヶ月後、施設全体を覆う程のコンブが繁茂し、コンクリート板上面には多くのコンブが見られましたが(写真2)、夏になると波浪等による流出によりコンクリート板の上縁周辺に残るばかりとなりました(写真3)。


写真2 施設を覆うコンブ(2022年4月14日)


写真3 コンクリート板上縁に残ったコンブ(2022年8月27日)

 これは、コンクリートブロックで上縁部や側面の上端付近にコンブの着生が限られるとした、川嶋ら(1973)の報告に一致します。また、新しく設置したコンクリートブロック等における幼体コンブの減耗は、天然基質に比べてゆるやかであると考えられていますが(船野ら,1970) 、3年目頃から雑海藻の侵入とともにコンブの着生が減少し、天然岩礁に近い状態へと遷移するとされています(道津,2006)。

ライブカメラ前の施設は、古くなってコンブが生えにくくなったコンクリート板を、コンブの生えやすい新しいものに容易に交換することが可能です。今後も、この特徴を活かして、コンクリート板上に母藻を確保し、そこから供給されるコンブのタネによって、施設周辺の天然基質へコンブ藻場を拡大することを目指して技術の開発に取り組んで参ります。

参考文献

川嶋昭二・佐々木茂(1973)コンクリート・ブロックへのコンブ着生様式 第1報 円筒型ブロックの場合,北水試月報, 30(4) , 15-26.

船野隆・石川政雄(1970)コンクリートブロック礁におけるマコンブの生態 , 北水試月報 , 27(3) , 6-22.

道津光生(2006)海岸構造物による岩礁域生物の生息場の造成ー北海道南西部沿岸における海藻と藻食動物の共存をめざしてー , 海生研研報 , 91-46.

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