SBT、CN、脱炭素の重要性とそのメリットについて
株式会社エコニクス 自然環境部
陸域担当チーム 渡邉 香織
最近、SBT(Science Based Targets)やCN(Carbon Neutral)、脱炭素といった言葉を耳にすることが多いと思います。これらの概念は、企業が気候変動に対処し、持続可能なビジネスモデルを構築するための重要な指針となります。本記事では、これらの用語の定義と、企業が取り組むメリットについて詳しくお話しします。
【用語の定義】
二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量の削減に関する似たような言葉ですが、それぞれ意味が異なります。私たちは言葉の意味を正確に理解して、自分たちが取り組むべきものを検討する必要があります。
■SBT(Science Based Targets):「科学的根拠に基づいた目標」
企業がパリ協定の目標に整合した温室効果ガス排出削減目標を設定することを指します。この目標は、気候変動の影響を軽減するために必要な具体的な数値に基づいています。
■CN(Carbon Neutral):カーボンニュートラル
温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることを指します。具体的には、ある活動やプロセスから排出される二酸化炭素(CO₂)やその他の温室効果ガスの量を、同等の量のCO₂を削減または吸収することで相殺することが求められます。
■脱炭素(Decarbonization)
脱炭素とは、温室効果ガス、特に二酸化炭素(CO₂)の排出量を削減するプロセスを指します。これは、気候変動を抑制し、持続可能な社会を実現するための重要な取り組みです。
【企業が取り組むメリット】
1.競争力の向上
差別化:環境に配慮した企業としてのイメージを確立し、顧客からの信頼を得ることができます。
市場のニーズに応える:環境意識の高い消費者に対してアピールできる製品やサービスを提供でき
ます。
2.コスト削減
エネルギー効率の向上:エネルギー使用の最適化や再生可能エネルギーの導入により、長期的に
コストを削減できます。
廃棄物管理の改善:資源のリサイクルや廃棄物削減により、運営コストを削減することができます。
3.リスク管理
規制の遵守:環境関連の規制が強化される中、事前に対応することで法的リスクを軽減できます。
気候変動リスクの軽減:環境への影響を減少させることで、気候変動による事業リスクを低減でき
ます。
4.投資機会の拡大
ESG投資の増加:環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮した企業への投資が増えており、資金調達
の機会が広がります。
5.社員のモチベーション向上
企業文化の向上:環境への取り組みは、社員の誇りや働きがいを高め、社員の定着率を向上させる要
因となります。
6.ステークホルダーとの関係強化
顧客や取引先との信頼関係:環境への配慮を示すことで、顧客や取引先との関係を強化できます。
【実践的な取り組み例とステップ】
■農業分野の事例
取り組み内容:化学肥料や農薬を使用せず、自然の生態系を活用した有機農法を実践。具体的には、コンパニオンプランティング(相性の良い植物を組み合わせて栽培する方法)を用い、害虫を自然に抑制する方法を採用。
成果:生産コストの削減とともに、消費者からの信頼を得て、売上が前年比で30%増加。
■水産業の事例
取り組み内容:未利用魚や加工残さなどの廃棄物を利用して肥料を製造し、焼却処理コストとCO2排出量を削減。
成果:環境に優しく自然由来の製品として、消費者からの支持も高まり、売上が前年比で増加。
■製造業の事例
取り組み内容:廃棄物からバイオマスを利用してエコ製品(例えば、バイオプラスチック)を製造。生物由来の材料を使用することで、石油由来のプラスチック使用を削減。
成果:環境に優しい製品として注目を集め、新規顧客の獲得に成功し、売上が40%増加。
■取り組みを始めるためのステップ
企業が持続可能な取り組みを始めるためのステップを示します。
1.現状の評価:自社の資源やプロセスを評価し、環境への影響を把握します。
2.持続可能な方法の導入:有機農法やバイオマスの利用など、持続可能な方法を導入します。
3.パートナーシップの構築:環境保護団体や他の企業と連携し、共同で活動することで効果を高めます。
4.教育と研修:社員に対して環境意識を高めるための教育や研修を行います。
5.成果のモニタリング:定期的に成果を評価し、必要に応じて戦略を見直します。
【まとめ】
SBTやカーボンニュートラル、脱炭素に取り組むことは、単なる環境への配慮を超え、持続可能なビジネスモデルの構築に繋がります。これらの取り組みは、競争力の強化やブランドイメージの向上に寄与し、さらには顧客や取引先との信頼関係を深める重要な要素となります。
私たち一人ひとりが、環境に優しい行動を選択することが求められています。まずは、カーボンニュートラルの目標を掲げ、小さなステップから始めてみましょう。省エネ対策やリサイクルの推進などの取り組みが、企業の持続可能性を高め、未来の世代に美しい地球を残す一助となります。
上記のメリットは、中小企業でも享受できるものです。何か一歩を踏み出したいという企業の皆様、ぜひご相談ください。一緒に考え、取り組んでいきましょう。
参考資料
Ambitious corporate climate action(https://sciencebasedtargets.org/)
グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/index.html)