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2006.01.01
ECONEWS vol.151

新年挨拶(戌)

謹んで新年のご祝辞を申し上げます。

 昨年は知床が世界自然遺産に登録され、北海道における自然環境の価値を全世界に知らしめることができ、その価値が認められたものと思います。

 その自然環境を利用する人間や産業は、今まで以上にその価値を認識し、生態系を健全に循環させるため、知恵を絞らなければなりません。また、本年は北海道において循環資源利用促進税の導入などが予定されており、限りある資源の有効利用と環境負荷を軽減させるため、努力をしていかなければなりません。

 本年は、このような健全な食糧生産環境ならびに廃棄物における『循環』をキーワードに、環境ナビゲーション企業として皆様のお役に立てればと考えております。

 最後になりましたが、本年も皆様にとりまして良い年でありますようご祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

代表取締役社長 伊藤 聡

 

 本年の干支は戌(犬)でありますが、その犬と日本人の関わりは古く、約1万年前の縄文時代までさかのぼることとなります。

 その関係は、現代と同様に人間は犬を大切にし、ペットとして飼っていたそうでうす。この時に飼われていた犬は縄文犬と呼ばれ、数多くの埋葬された遺骨が見つかっております。ちなみに縄文犬は柴犬の先祖にあたるそうです。

 もともと犬には獲物を捕らえる捕食行動、外敵の侵入に対しての警戒行動などの能力を備えており、また雑食性が強かったことから、人間の残飯処理も兼ねて縄文時代の人間が番犬として活用したということなのでしょう。

 しかし時代が変わるとその犬への役割は、放牧犬や狩猟犬、警察犬、介護犬など、何らかの人間の手助けを担わせるものとして変化していきました。時には食料目的として飼われていた時代もありましたが、近年ではコンパニオンアニマルとして、人間にとって単なるペットといった位置付けだけではなく、人間の病気の治療までしてくれる存在になってます。

 一般的にオオカミは犬の近い先祖ということが言われており、皆さんの中でもそう思っている方が多いかと思いますが、実際の所はまだこの説が正しいということにはなっていません。ただ、最近においてmitochondrial DNAを使った解析により、オオカミと古代の犬とが遺伝的に近似していることを報告しています。

 日本では絶滅してしまったとされているオオカミですが、北海道に分布していたものはエゾオオカミ、本州・四国・九州に分布していたものはニホンオオカミとして亜種で区分されており、疫病の大発生と餌となっていた大型の草食動物の激減、そして何より人間による駆除(家畜への害獣として)によって絶滅したとされています。

 その絶滅してしまったオオカミについて、最近ではヨーロッパや米国では取組まれているように、北海道に再導入しようという動きもあります。ただ、再導入については、必要な生息環境の確保や定着性、人や家畜等への影響、種の遺伝的かく乱など、様々な課題や問題が存在し、科学的および社会的に高度な検討を行う必要があり、実現するためにはまだまだ先の話しとなりそうです。

 オオカミを絶滅させてしまったのも人間であり、またその先祖の犬を手元において可愛がったり利用したのも人間という、なんとも複雑で滑稽な歴史であります。皆様もこれを機会に、人間が絶滅に追いやってしまった生物や歴史について考えてみては如何でしょうか。

 Econews編集部
環境事業部 環境事業グループ 小山 康吉

・Mitochondrial DNA from Prehistoric Canids Highlights Relationships Between Dogs and South-East European Wolves
・知床博物館研究報告 Bulletin of the Shiretoko Museum 26 (2005)
「100平方メートル運動の森・トラスト」と絶滅種の復元. 石城謙吉 (100 Square Meters Forest Trust and restration of extinct animals. ISHIGAKI Kenkichi) :25-27
肉食獣再導入問題をめぐって. 石城謙吉・中川 元 (Subjects surroundig carnivore reintroduction. ISHIGAKI Kenkichi & NAKAGAWA Hajime) :29-36
オオカミ(Canis lupus)の保護管理及び再導入事例について. 亀山明子・仲村 昇・宇野裕之・梶 光一・村上隆広 (A review: Management and reintroduction of the Wolf (Canis lupus) in Europe and the United States. KAMEYAMA Akiko, NAKAMURA Noboru, UNO Hiroyuki, KAJI Koichi & MURAKAMI Takahiro) :37-46
絶滅種の人為的導入に関する法制度および社会的側面の課題―オオカミとカワウソを例として―. 加藤峰夫 (Can we see wolfs and otters again at Shiretoko Peninsula ? A study on sociological and legal aspects of the reintroduction of extinct species. KATO Mineo) :47-54