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2023.07.15
洋上風力通信 vol.24

新たな環境影響評価制度で考慮すべき自然環境への影響について

電力環境部 村上俊哉

 2023年度より経済産業省と国土交通省は、洋上風力発電の今後の案件形成の加速化に向けて、案件形成の初期段階から政府や自治体が関与し、より迅速・効率的に調査等を行う「日本版セントラル方式」の確立に向けた制度設計を進めています。

 北海道においても洋上風力発電事業の実施が見込まれている「島牧沖」、「岩宇・南後志地区」、「桧山沖」を対象に、先ずは風車の設置位置や設置間隔等の基本設計に必要な風況・気象海象観測や海底地盤に関わる調査が実施されています。

 これに並行して環境省は、2023年5月11日に「洋上風力発電の環境影響評価制度の最適な在り方に関する検討会(第1回)」を開催し、この中で公益財団法人 日本自然保護協会(若松氏)は、「洋上風力発電の環境影響評価制度で考慮すべき自然環境事項」について大変興味深い報告をされています。その中で若松氏は、“洋上風力発電は、先行して進んでいる陸上における再生可能エネルギー導入と比べると、生態系などへのダメージは相対的に小さいものの、導入の方法によっては影響が懸念される。その影響というのは良いものも悪いものも想定され、整理が必要である ”ことを解説されています。

 参考資料から、洋上風力発電に関わる新たな環境影響評価制度で考慮すべき自然環境への影響については、6種3カテゴリーに整理することができます(表1)。

表1 自然環境への影響 ※参考資料2)を改変

 今後、洋上風力発電に関連するモニタリング調査を実施する上では、海棲哺乳類への影響とともに、魚類などへの直接的な影響と間接的な影響の評価が、地域との共存共栄を図る上で特に重視すべき自然環境ではないかと考えています。

 海棲哺乳類への影響としては、工事騒音による影響と稼働後の振動などの影響がネガティブな影響として指摘されていますが、建設後は絶滅危惧種の採餌行動やナーサリー機能の可能性も考えられます。

 魚類などへの影響としては、直接的な影響と間接的な影響があります。直接的な影響としては、無脊椎動物が施設基礎周辺に定着し、海生生物の多様性が向上することに加え、施設周辺は漁業活動が制約されることによりナーサリーが形成され、水産資源増加といったポジティブな影響も期待できます。

 また、間接的な影響としては、施設基礎周辺で魚類が増加することにより海棲哺乳類や鳥類が採餌のために集まることが可能性として考えられ、これらが増えることにより魚類にとってはネガティブ、ニュートラル、ポジティブ全ての影響が考えられます。

 設立以来、北海道内各地の漁業関係者や地域住民との良好な関係を築き上げている弊社には、海棲哺乳類や鳥類、無脊椎動物や魚類などの生態に詳しい専門技術者が多数在籍しています。

 洋上風力発電事業を円滑化に進めていく中で、自然環境と生き物の生態について疑問が生じましたら、お気軽にご相談ください。

参考資料

1)洋上風力発電の環境影響評価制度の最適な在り方に関する検討会(第1回)議事録

2)洋上風力発電の環境影響評価制度の最適な在り方関する検討会(第1回)の開催について. 資料2-2
     洋上風力発電の環境影響評価制度で考慮すべき自然環境事項. 若松伸彦(日本自然保護協会)

洋上風力発電、案件形成、日本版セントラル方式、新たな環境影響評価制度、自然環境への影響、ナーサリー機能、絶滅危惧種の保護、採餌行動、物理的な影響、海浜植物への影響

洋上風力通信_Vol24