株式会社エコニクス
環境事業部 小山 康吉
生物の多様性を「生態系」「種」「遺伝子」の3つのレベルでとらえ、「多様な生物をその生息環境とともに保全」「生物 多様性の構成要素の持続可能な利用」「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分」を目的とした生物の多様性に関する条約が1993年に国連にて 発効され、我が国も締結しました。
2007年11月には、今回で3度目となる「第3次生物多様性国家戦略」が閣議決定され、2008年6月には、生物多様性の保全を目的とした基本法である「生物多様性基本法」が公布・施行と、国として更なる生物多様性の保全へ向けた取り組みが強化されました。
なぜ、生物の多様性を確保していかなければならないかというと、多様な生物が存在することにより、その構成種からなる生態系が様々なサービスを私達に提供してくれるからなのです。
供給サービス | 食料、燃料、木材、繊維、薬品、水など、人間の生活に重要な資源を供給するサービス |
調整サービス | 森林があることによって気候が緩和されたり、洪水が起こりにくくなったり、水が浄化されたりといった、環境を制御するサービス |
文化的サービス | 精神的充足、美的な楽しみ、宗教・社会制度の基盤、レクリエーションの機会などを与えるサービス |
基盤サービス | 上記のサービスの供給を支えるサービス |
その生物多様性に変化をもたらしている主な原因は人為的なものであり、その要因としては、「生息・生育場所の改変」 「侵略的外来生物の拡大」「資源の過剰利用」「環境の汚染」「気候変動」などで、生物多様性から多大な恩恵を受けているはずの私達が皮肉にも生物の存続を 脅かす原因になっているのです。
その生物多様性の保全を考える上で、先ずは現状の把握や継続的な監視をすることが重要です。その一環として各省庁では様々な自然環境調査が推進されています。
国土交通省 | 河川水辺の国勢調査 |
農林水産省 | 森林資源モニタリング調査、田んぼの生き物調査、農業農村環境情報整備調査 |
環境省 | 自然環境保全基礎調査、モニタリングサイト1000 |
そのうち環境省が平成15年度より進めている「モニタリングサイト1000」のプロジェクトは、官庁、研究者、地域専 門家、NGOなどが参加のもと、我が国の代表的な生態系(森林、里地里山、陸水域、沿岸域など)について、国土の自然環境の劣化を把握するために長期的な 生態系モニタリングを行っています。動植物の生育生息状況などを100年にわたって同じ方法で調べ続けるサイト(調査地点)を、最終的には全国に1000 箇所設置することを目指していることからこういったプロジェクト名となっています。
このモニタリングサイト1000の一環として行われている里地調査に、今年から一般市民が主体となったボランティアによる調査が開始されます。この里地調査に社会貢献の一環として、当社社員の有志による参加を決め、このたび一般サイトとして内定されました。
里地調査の項目としては、植物、鳥類、水環境、中・大型哺乳類、指定種調査(カヤネズミ、カエル類、チョウ類、ホタル 類)、人為的インパクトとなっており、これらから各自が選択し、それぞれの調査仕様に則り5年間調査を実施することとなります。これらの調査データは自然 保護協会を通じ、データが公開される予定となっています。
当社では自社付近の野幌森林公園や札幌市緑地をフィールドにし、鳥類調査と人為インパクトを実施致しします。
そして先日、里地調査のコアサイトがある栗山町にて一般サイト説明会・調査講習会が開催され、今回参加される一般サイト参加者の皆様とお会いすることができました。
調査講習会は、コアサイトである栗山町ハサンベツにて実施され、開始早々からハチクマやノスリのお出迎えがあり、楽し く講習会を終えてきました。ハサンベツは北海道では珍しい本州の里地里山の風景を感じ、その生き物の豊かさと市民の方々の活動参加に驚いた次第です。
まだ現地調査については開始していませんが、その進捗についてはこの場などを借り、適時情報を発信していきたいと考えています。
私達が社会に対して貢献できることは色々とあるとは思いますが、私達の持っている技術や知識がより貢献できる場面で、今後も様々な活動ができたらと思っています。
▼参考資料
第三次生物多様性国家戦略(環境省)
モニタリングサイト1000(環境省)
モニタリングサイト1000〔里地調査〕(財団法人 自然保護協会)
コアサイト実施グループ「栗山町ハサンベツ里山計画実行委員会」