株式会社エコニクス
環境事業部 取締役部長 上田 重貴
雪も降り始め最近めっきりと寒くなってきました。寒くなってくると沿岸の岩場ではアイナメ(Hexagrammos otakii)の恋の季節が始まります。
アイナメは日本各地に分布し晩秋から冬に産卵します。産卵期には雄の体色が黄色くなり、潜水観察をしていると非常に目立ちます。雄は縄張りをつくって雌を誘い、産卵を促します。雌は卵を産むとどこかに行ってしまいますが、雄は岩の窪みなどに産みつけられた卵が外敵に食べられないように守り続けます。卵を守っている雄は少しでも他の魚などの外敵が近づこうものならば、必死な形相で四六時中追っ払って卵を守りますが、その様は見ている私が疲れるほどの勢いです。しかし、深追いをしすぎて他の魚に大事な卵を食べられてしまう場合も多いようです。
写真1、2は日本海のとある海辺の水深7mの岩礁で撮影しました。数週間後に行ってみると卵の中で目が動いているのが見えましたが、外敵に食べられたのか卵の数がだいぶ減っていました。2ヶ月後には孵化直前の卵を守るアイナメがいました。卵は通常1ヶ月ほどで孵化するといわれていますので、何匹もの雌を誘い込み産卵させていたようです。雄の体色は黄色から通常の色に戻りつつあり、幾分やつれているように見えます。きっと餌もろくに食べずに卵を守っていたのでしょう。
男はつらいよね、アイナメ君!
同じように雄が卵を守る魚としてはアイナメの近縁種のホッケ(雄が白くなります)やギスカジカ(写真3)、淡水ではエゾハナカジカなどが知られています。
つらいのは君だけじゃないぞ! アイナメ君!