自然環境部 海域担当チーム
尾田 崇太朗
日本は海に囲まれ、縄文時代の遺跡や貝塚から海藻と思われる遺物が見つかるなど、太古の昔から海藻を食べる文化が根付いています。北海道で生活している私は、昆布やワカメ、海苔といった海藻に特に馴染みを感じています。最近では、海藻の食べ方も進化して、スーパーやコンビニなどで乾燥海藻だけでなく、海藻サラダや海藻スムージーなんてものも見かけるようになり、海藻食の注目度の高さが伺えます。
私は北海道生まれ・北海道育ちで、最近まで他の地域の海藻文化を深く意識したことはありませんでした。そんな中、福島県を訪れた際、「えご」という郷土料理に出会い、初めての料理に驚きつつも、新たな海藻食文化を知ることになりました。「えご」とは、エゴノリという紅藻類(イギス科)を煮て寒天で固めた料理のことであり、酢味噌や醤油をかけて食べるのが一般的なようです(写真-1参照)。
私は地元の方のおすすめでショウガと醤油でいただきました。特段インパクトがある味というわけではないのですが、磯の風味がよく感じられ、「海藻を食べている!」と実感させられる味でした。

写真-1 えご (福島県)
ちなみに、エゴノリを使った料理は、福島県の他にも長野県や福岡県、鳥取県などにも存在しており、いずれの地域も正月などお祝い事の際にふるまわれる料理だそうです(写真-2参照) 。

写真-2 日本各地のエゴノリを使った料理
①:えごの酢味噌あえ(長野県),②:おきゅうと(福岡県),③:いぎす(鳥取県)
福島県の「えご」という郷土料理に出会ったことで、日本の各地域には伝統的な海藻の食べ方が数多く存在しており、海藻の魅力は果てしないことを実感することができました。今後は、海藻食文化に対するアンテナをより一層広げ、さまざまな地域の海藻料理に触れることでその奥深さを学んでいきたいと思います。
参考文献
・神谷充伸監修 海藻 日本で見られる388種の生態写真+押し葉標本 誠文堂新光社出版
・農林水産省 うちの郷土料理
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/index.html
紅藻類、イギス科、エゴノリ、えご、おきゅうと、いぎす、福島県、長野県、福岡県、鳥取県