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2025.05.25
藻場通信 vol.53

藻場と赤潮

自然環境部 海域担当チーム
田村 勝

 北海道が実施したヒアリング調査結果によると、北海道における天然コンブ漁場の面積は2000年に約1.6万haでしたが、2017年には約1.2万haにまで減少していました1)。また、コンブ(乾燥重量)の生産量は、1976年に約3万tでしたが、2018年には約1万tにまで大幅減少しており1)、2024年の速報ではさらに0.8万tにまで減少しました2)

 一方、2021年に北海道では道東地方を中心とする太平洋沿岸において大規模な赤潮が発生し、ウニ、ツブ、サケといった主要水産物に大きな被害をもたらしました。

 赤潮とは、海水中のプランクトンが大増殖して海水が赤色などに変色する現象のことです。海水中には赤潮の原因プランクトンを殺す働きがある「殺藻細菌」の存在が知られており3) 、海草のアマモ、海藻のアオサやマクサ、コンブなどの表面に高密度で生息していることが最近分かってきました。藻場が増加すると、そこに生息する「殺藻細菌」も増加することから、赤潮の発生を抑制する働きが期待できると考えられています。

 前段で述べたように、北海道の藻場は減少の一途をたどっています。藻場の減少と赤潮の発生を直接的に結びつけるのは少し乱暴かもしれません。しかし、藻場の減少がこれ以上進行すると、赤潮にとってみれば都合のいい環境になってしまうのではないでしょうか。

 一般的に藻場の機能としては「ウニやアワビの餌」、「魚類の産卵場」、「ふ化した稚仔魚の隠れ家」、「魚類の餌となる微小生物の増殖場」、「窒素・リン等の栄養塩や二酸化炭素の吸収」が挙げられますが、「赤潮の予防効果」もこれらに加えることができそうです。

 藻場造成に関する取り組みや赤潮の原因プランクトン分析に関するご要望がございましたら、これらの実績がある弊社へぜひご相談いただければと思います。

図 藻場による赤潮発生予防のイメージ

参考資料
1)北海道での藻場・干潟ビジョンについて
https://www.jfa.maff.go.jp/j/seibi/attach/pdf/r1_isoyaketaisakukyougikai-3.pdf
2)水産統計(北海道水産現勢)
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/sum/141598.html
3)海藻アオサの殺藻能を利用した赤潮防除剤の確立
http://sankei-fou.or.jp/research/reserch_7okunishi2018.pdf

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