自然環境部 海域担当チーム
武田 史絵
藻場には、微細藻類やデトリタスを餌とする多種多様な無脊椎動物が生息しています。小型のものが多いですが、ほとんどの海産動物の門が含まれるほど種類が多岐に渡っています。
これらの生物は葉上生物や葉間生物と呼ばれ、調査する際は、プランクトンネットで海藻の上から覆ったり、海藻が繁茂している水中を曳いたりして採取し、種類や数を調べます。
中には、ぱっと見では海藻に見える生物もいます。例えば、ワレカラ類は細長い体型をしており、海藻の葉や茎に似ています。ワレカラ類は脚で海藻にしっかりとつかまり、その脚を使って移動もしますが、泳ぐことはほとんどありません。調査中に引き揚げたロープや作業時の軍手にくっついている姿をよく見かけます。
ワレカラ類は体長1~2cm程度で、トゲトゲの背中をもつワイルドな種もあれば、首が長くスマートな種もいます。顕微鏡で観察すると、つぶらな瞳がなんともかわいらしいです。
軍手にくっついたワレカラ
ワレカラ類は多くの無脊椎動物が有する浮遊幼生期を持たず、生まれたときから親と同じような姿をしています。中には、幼体が母親につかまっていたり、母親の周りから離れなかったりする種も報告されており、その行動は『子守行動』として知られていますが、給餌はしないのだとか。ワレカラ類ならではの行動なのかもしれません。
様々な形態のワレカラ
これらの小さな無脊椎動物は、藻場に蝟集する魚類等のエサとなり、藻場の食物連鎖の一部を形成しています。藻場は多くの生きものの生活を支えているのですね。
<参考資料>
・青木優和(1992)母親が子守をする~ワレカラ. 週刊朝日百科 動物たちの地球(無脊椎動物10), 302-303.
・青木優和(2002)海藻と葉上動物. 堀輝三・大野正夫・堀口健雄編「21世紀初頭の藻学の現況」, 日本藻類学会, 山形, 143-144.
・水産庁(2021)第3版 磯焼け対策ガイドライン.
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