自然環境部 海域担当チーム
大島 広幹
昨年ほどではありませんが、今年の夏も例年より暑い日が続いております。気温と同様、海水温も高い(ヌルい)傾向にあり、潜水作業中は海水が素肌にまとわりついてくる感じがして、少し不快な気分になります。
そんな私の感情を察してか、函館港内のライブカメラ前の試験施設に生育しているマコンブの映像を見ると、心なしか暑さで元気がないように見えてきます…
さて、今回は弊社がライブカメラ前とは別に設定している試験区Aにおけるマコンブの生育状況についてレポートさせていただきます。
一般的にマコンブは冬~春季(1~5月)にかけて生長し、夏季(6~7月)に最繁茂期を迎えます。ちなみに、4月時の葉長は通常1mを超過します(写真1参照)。
【写真1】 4月時のマコンブ生育状況(2020~2023年)
試験区Aにて2023年の晩秋に開始したマコンブ生育試験については、2024年4月の時点でマコンブの姿がほとんどみられなかったことから、失敗に終わったと考えていました。ところが、2024年7月に確認の調査を行ったところ、マコンブがしっかりと生育していました(写真2参照) 。
【写真2】 2024年4月と7月のマコンブ生育状況(試験区A)
本試験では、通常よりも若干遅い時期(12月)に採苗をおこなったのですが、生長がここまで遅れることは想定できませんでした。本通信のバックナンバー(Vol.34)に記載したとおり、2023年は海洋熱波が発生した影響で本海域の水温も異常に高くなっていたことから、試験で使用したマコンブの母藻や遊走子の活性が低下していた可能性が考えられます。
こうした異常事態に柔軟に対応していくために、今後どのような開発試験のテーマを設定すべきか、我々としては非常に悩ましい限りです。高水温化の傾向にある海域環境に対応した藻場の保全や造成を実現させるためは、コンブ類の品種改良や移殖が必要なのでは…と感じている次第です。
<参考資料>
①コンブ胞子体の成熟機構解明
https://repun-app.fish.hokudai.ac.jp/course/view.php?id=601
②神谷徳成・和田明・長谷川一幸(2006)
沿岸域に生育するマコンブの生育域・生産量と水温及び海底基質との関連性に関する研究. 水工学論文集, 第50巻, 1477-1482.
藻場造成、マコンブ、海洋熱波、海水温の上昇、生育遅延