2021年 秋季に大きな被害をもたらした赤潮原因プランクトンについて、被害発生年以降、数多くの新たな事実が明らかとなっています。本エコニュースでは赤潮原因プランクトンはどこからやってきたのか、なぜ爆発的に発生したかをご紹介いたします。
株式会社エコニクス 電力環境部
泊発電所担当チーム 尾田 崇太朗
はじめに
皆様は覚えていますか?2021年の秋、北海道東部の海域を中心に大規模な赤潮が発生し、全道的に深刻な被害をもたらしました。赤潮の影響により、ウニやサケなど北海道を代表する水産資源が大量にへい死し、その被害総額は約91億円にのぼるといわれています1)。
赤潮とは、海中のプランクトンが爆発的に増殖し、海水が赤く変色する現象です。原因となるプランクトンはさまざまですが、2021年秋に発生した赤潮は、渦鞭毛藻の一種である Karenia selliformis(以下、Ks)によって引き起こされたと考えられています(ECONEWS vol.342参照)。

写真 Ks顕微鏡写真2)
当時は、赤潮の発生メカニズムが十分に解明されておらず、「外来プランクトンが流入した」、「海洋熱波による影響だ」といった報道が多く見られました。今回は、その後の研究から明らかになった“赤潮プランクトンの正体”と“発生の背景”についてご紹介します。
どこからきたプランクトン?
北海道立総合研究機構の調査によると、2020年にカムチャッカ半島東岸で発生したKsが、親潮の流れによって北海道東部海域へと運ばれたことが明らかになっています。さらに、北海道で観測されたKsとカムチャッカ半島で発生したKsの遺伝子配列が近縁であることも判明し5)、この結果からも「カムチャッカ半島から由来した」ことが強く裏付けています。

図 北海道周辺海流図
(海上保安庁https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN1/soudan/kairyu.html)
どうして爆発的に増えた?
Ksは特定の条件下でのみ増殖できるプランクトンです。通常、海中では他の珪藻類が栄養塩を独占しているため、Ksは優占種となることはほとんどありません。
しかし、2021年には非常に強い海洋熱波が発生し、競合相手である珪藻類の増殖が抑制・へい死したことで、Ksが増えやすい環境が生まれました。さらに、同時期に多くの低気圧が通過したことにより海水が撹拌され(鉛直混合)、深層から多量の栄養塩が供給されたことで、Ksが一気に増殖したと考えられます6)。

図 2021年の赤潮発生メカニズムの概要
終わり
2021年の赤潮は、単なる“外来プランクトンの侵入”ではなく、海流・気象・生物群集など複数の要因が重なって発生した現象であると推測されます。これらの条件は、地球温暖化や海洋熱波などの近年の気候変動と深く関係しています。赤潮の発生は単なるの自然現象の一つではなく、海が変わりつつある結果であると考えられます。
本年は「海で起きている変化」に注目し、現場で感じた違和感を見逃さず分析することで、次に起こりうる「新たな変化」の兆しをいち早く捉えてまいります。
弊社は海洋環境のみならず、陸域や生活環境も含め、環境全般をワンストップでサポートいたします。
課題解決や調査のご相談は、ぜひお気軽にお声がけください。
皆様の事業発展に貢献できる一年となるよう、全力で取り組んでまいります。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
引用文献
1)北海道赤潮対策緊急支援事業共同研究機関(2024):「令和4年北海道赤潮対策緊急支援事業のうち漁場環境改善緊急対策事業 事業報告書」
2)Haywood A.J, Steidinger K.A, Truby E.W, Bergquist P.R, Bergquist P.L, Adamson J, MacKenzie L(2004):Comparative Morphology And Molecular Phylogenetic Analysis Of Three New Species Of The Genus Karenia (Dinophyceae) From New Zealand, J.Phycol. 40, pp.165-179.
3)今井一郎他(2016):有害有毒プランクトンの科学, 恒星社厚生閣.
4)今井一郎(2012):シャットネラ赤潮の生物学, 生物研究社.
5)北水試だより 108(2024):資源管理・海洋環境シリーズ
2021年北海道太平洋大規模赤潮の発生シナリオ
6)山口 篤ほか(2023):Horizontal distribution of harmful red-tide Karenia selliformis and phytoplankton community along the Pacific coast of Hokkaido in autumn 2021, 水産海洋研究 86(2) 41-49, 2022.

