自然環境部 部長
田保 知佳
1999年に制定された環境影響評価法は、2011年に一部改正され、
○風力発電所を対象事業に追加
○計画段階配慮書手続(配慮書手続)の新設
○方法書における説明会開催の義務化
○環境保全措置等の結果の報告・公表(報告書手続)の新設
○インターネット利用等による環境影響評価図書の電子縦覧の義務化
などが主な改正事項となっています。
現在の環境アセスメントの手続の流れとしては下図のとおりとなります。
図 「環境アセスメントの手続」
(環境影響評価情報支援ネットワークから)
まず初めに行われる配慮書手続は、事業の場所・規模などの検討段階において、環境保全のために配慮すべき事項についての検討結果を伝えるものです。
配慮書の内容は、(1)事業を実施しようとする者の氏名及び主たる事務所の所在地と住所、(2)目的及び内容、(3)事業実施想定区域及びその周囲の概況、(4)計画段階配慮事項に関する調査、予測及び評価の結果を記載することとなっています。このうち、「(3)事業実施想定区域及びその周囲の概況」の自然的状況では大気や水に係る環境の状況、動植物や生態系の状況などについて、社会的状況では人口や産業、土地利用、交通の状況などについて整理します。これらの情報の整理には、時間がかかることが課題の一つとなっていました。環境省では、都道府県や関係団体の協力のもと、自然・社会環境に関する情報を一元的に収録、提供する「環境アセスメントデータベースEADAS(イーダス) 」を公開し、環境アセスメントの期間の短縮と費用の低減を図っています。
しかし、自然的状況の中の動植物の整理と重要種の抽出については、事業箇所での生物に関する文献収集と生物リストの整理が必要で、インターネットで情報を取得できるものは少なく、書籍や文献を入手し、データ起こし作業から必要なものも少なくありません。収集する文献によっては古いものも多く、現在用いられている種名(和名・学名)と異なるものや、地方名や分類が見直しされる前の種名が記載されているものもあり、同一種かどうかの判別が必要になる場合があります。
また、リスト化するにあたり、何に準拠して整理するのかも重要になります。
陸生生物の場合、「河川水辺の国勢調査」の調査結果の整理に際して、生物の和名・学名および配列などの統一を図る目的で作成された『河川水辺の国勢調査のための生物リスト』に準拠することが多いですが、水辺に生息する種のリストであるため、森林に生息する種や分類群自体も含まれていない場合があります。海生生物については、このような準拠すべき公のリストがないために、図鑑を用いて整理するケースが多くみられますが、広範囲な生物分類群を網羅したものは出版年度が古く、現在の分類体系や種名と異なっている場合がほとんどです。
弊社ではお客様の要望を踏まえ、陸生生物については『河川水辺の国勢調査のための生物リスト』をベースに、また、海生生物についてはBISMaLやWoRMSをベースに、最新の情報を追加したオリジナルの生物リストを用意し、種の整理や重要種の抽出等の迅速化を図っています。
配慮書作成、特に「(3)事業実施想定区域及びその周囲の概況」の自然的状況、社会的状況の作成についてお困りごとがございましたら、是非弊社にお問合せください。
参考文献
環境影響評価情報支援ネットワーク
http://assess.env.go.jp/1_seido/1-1_guide/index.html
環境アセスメントデータベースEADAS
https://www2.env.go.jp/eiadb/ebidbs/
海洋生物の多様性と分布情報のデータベース BISMaL
https://www.godac.jamstec.go.jp/bismal/j/
World Register of Marine Species: WoRMS
https://www.marinespecies.org/
洋上風力、北海道、日本海、環境調査、アセスメント、モニタリング
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